TOPコラム再生医療のトラブル事例は?行政処分から見える起こり方と確認点

再生医療のトラブル事例は?行政処分から見える起こり方と確認点

再生医療のトラブルを調べると、無届けの医療機関が危ないという説明によく行き当たります。ただ、それだけを覚えて帰ると、確認すべき点を取りこぼしかねません。

2026年に厚生労働省が公表した行政処分を並べると、別の姿が見えてきます。処分を受けたのは、提供計画を出したうえで再生医療を行っていた医療機関と、その細胞を加工していた施設でした。届け出があることと、安全に運用されていることは同じではないのです。

この記事では、実際に公表された処分から、トラブルがどういう形で起きているのかを整理します。

この記事の監修者

Riyoメディカルクリニック 院長 上利理代

上利 理代(あがり まさよ)

Riyoメディカルクリニック 院長
再生医療医/統合医療医/放射線治療専門医/日本スポーツ協会公認スポーツドクター

高知医科大学(現・高知大学医学部)を卒業後、岡山大学放射線科に入局。放射線治療専門医として、がん治療の臨床に長年携わる。在宅医療・統合医療の現場を経て、発症を未然に防ぐ医療の実現を目指し、2022年7月にRiyoメディカルクリニックを開院。「病気を診るだけでなく患者様を診る」という姿勢のもと、幹細胞治療、高活性化NK細胞療法、エクソソーム(幹細胞培養上清液)を統合的に組み合わせた診療を提供している。

 

届け出をしている医療機関でも処分は出ている

まず事実を並べます。2026年に厚生労働省が公表した再生医療等安全性確保法にもとづく行政処分は、1月から7月までに複数回ありました。

令和8年1月23日には細胞加工施設に対する改善命令が、同年2月20日には医療機関の管理者に対する改善命令が出されています。さらに3月と4月には、より重い緊急命令が発出されました。7月にも改善命令が公表されています。

命令には重さの違いがあると押さえておきましょう。改善命令は法第23条第1項や第48条第2項にもとづくもので、運用の不備を正すよう求める処分です。これに対して緊急命令は法第22条や第47条にもとづき、再生医療等の提供や特定細胞加工物の製造そのものを一時的に止めさせます。3月と4月に出たのは後者にあたり、止めなければ危害が広がると判断された場面だったと読めるでしょう。

ここで押さえておきたいのは、対象がいずれも制度の枠内にいた事業者だという点です。無届けで隠れて行っていた医療機関の話ではありません。提供計画を出し、番号が付いた状態で治療を提供していたところに、命令が出ているのです。

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処分は細胞を加工する施設にも出ている

もう1つ見落とされやすいのが、処分の対象が医療機関だけではないという点です。

再生医療では、細胞を採取する場所と、その細胞を培養して加工する場所が分かれている場合があります。加工を担う施設は細胞加工施設と呼ばれ、こちらも法律の対象です。実際、令和8年4月21日の緊急命令では、医療機関に加えて複数の細胞加工施設に対しても製造の一時停止などが命じられました。

工程が分かれているということは、確認すべき相手も分かれるということになります。診察を受ける医療機関の説明に納得できても、細胞を誰がどこで加工しているのかまでは説明されないことがあるでしょう。ここを尋ねないまま進むと、後から起きたことの経路が見えなくなるのです。

自院に細胞加工施設を持つ医療機関であれば、採取から培養、投与までを同じ組織のなかで追えます。委託している場合は、委託先がどこで、どのような届け出をしているのかを聞いてください。

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起きている事態には共通した形がある

公表された内容を読むと、起きている事態は大きく2種類に分けられます。

1つは、治療そのものに関わる健康被害です。令和8年3月13日の緊急命令では、その計画による再生医療等を受けた患者が死亡し、その原因が明らかになっていないことに鑑み、保健衛生上の危害の発生または拡大を防止する必要があることから命令が出されたと記されています。原因が明らかになっていないという書き方に注意してください。治療との因果関係が確定したという意味ではなく、分からないまま止めたという意味なのです。

4月の緊急命令では、脂肪由来幹細胞治療のあとに少なくとも5名が悪寒や発熱、嘔気などの体調不良を訴え、1名以上が入院したという経過が示されました。

もう1つは、起きたあとの扱いに関わる問題です。同じ4月の事案では、法律が定める報告を行わないまま治療が続けられ、厚生労働省が中止を要請したあとにも治療が提供されたという経過が公表されています。

報告は任意の親切ではありません。再生医療等安全性確保法は、治療によって疾病等が生じた場合の報告と、提供状況の定期的な報告を医療機関に課しています。日本再生医療学会も今回の命令を受けて、疾病等報告および定期報告の確実な実施を会員へあらためて求めました。制度は、悪い結果が出ること自体を禁じているのではなく、出たときに外から見える状態にすることを求めているのです。

トラブルの重心は、治療そのものよりも、何かが起きたあとの扱いにあるといえるでしょう。体調不良は、どんな医療でも起こりえます。分かれ目になるのは、それが記録され、報告され、必要なら止まる仕組みが働くかどうかです。

 

届け出の有無だけでは足りない

ここまでを踏まえると、よく言われる見分け方には限界があると分かります。

届け出があるかどうかは、確かに最初の関門です。厚生労働省は、提供計画を提出せずに再生医療等の提供を行った場合には法にもとづく罰則が適用されると示していますので、届け出のない提供は論外になります。ただし、そこを通過したあとにも運用の問題は残るのです。

区分の数字も判断材料にはなりません。第1種から第3種までの分類は想定されるリスクの高さによるもので、その医療機関がきちんと運用しているかどうかとは無関係です。

計画を審査する側にも目を向けておきましょう。第2種の提供計画は特定認定再生医療等委員会の意見を聴いたうえで提出される仕組みで、その委員会の一覧も厚生労働省のサイトで公開されています。どの委員会が関与したのかまで確認できる作りになっているわけです。

計画番号が公開されていることも、出発点にすぎないと考えてください。番号は手続きを踏んだ証拠であって、その後の運用まで保証するものではありません。番号を確認したうえで、誰が細胞を加工しているのか、体調に変化があったときにどう扱われるのかを、あわせて尋ねる必要があります。

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受ける前に自分で読める資料がある

判断材料は、実は公開されています。使い方を知らないだけという場合が多いでしょう。

厚生労働省 医政局 研究開発政策課が運営する再生医療等のオンライン手続サイトでは、提出された再生医療等提供計画のうち治療にあたるものが公開されています。誰でも閲覧できますし、第1種から第3種までの区分ごとに一覧をたどれる作りです。

ここで読めるのは計画の存在だけではありません。患者に渡される治療説明文書そのものが公開されている計画もあります。受診して説明を聞く前に、その医療機関がどういう文書で何を説明することにしているのかを読めるわけです。

説明文書では、想定される副作用や合併症の記載と、細胞をどこで加工するかの記載を見てください。web上の紹介ページには効果の説明だけが並んでいることがありますが、計画に添えられた文書のほうには起こりうる不具合が書かれています。両方を読み比べると、その医療機関がどこまでを説明する構えなのかが見えてくるでしょう。

順番としては、まず計画が公開されているかを見て、次に説明文書に目を通し、そのうえでカウンセリングで加工の担い手と報告の扱いを尋ねる形になります。文書と口頭の説明が食い違っていれば、その時点で立ち止まってください。

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よくある質問

再生医療で実際にトラブルは起きているのか

起きています。2026年だけでも、厚生労働省は再生医療等安全性確保法にもとづく改善命令や緊急命令を複数回公表しました。内容は同省のサイトで誰でも読めます。

 

トラブルは無届けの医療機関だけで起きているのか

そうではありません。2026年に処分を受けたのは、提供計画を出したうえで再生医療を行っていた医療機関と細胞加工施設でした。届け出があることと、安全に運用されていることは別だと考えてください。

 

死亡した事例があるというのは本当か

厚生労働省は令和8年3月13日の緊急命令で、その計画による再生医療等を受けた患者が死亡し、原因が明らかになっていないと公表しています。治療との因果関係が確定したという意味ではありませんので、そこは区別して読む必要があるのです。

 

細胞加工施設が処分されると患者にはどう影響するのか

その施設で作られた細胞加工物を用いる治療が止まります。令和8年4月21日の緊急命令では、医療機関の治療の一時停止とあわせて、細胞加工施設に対しても製造の一時停止などが命じられました。

 

医療機関を選ぶときに何を聞けばよいのか

細胞を誰がどこで加工しているのか、委託しているならその施設はどこか、そして体調に変化が出たときにどう記録し報告するのかの3点です。番号の確認だけで終えないでください。

 

提供計画は自分で読めるのか

読めます。厚生労働省が運営する公開サイトで、治療にあたる再生医療等提供計画が公開されており、計画によっては患者に渡される治療説明文書まで閲覧できるのです。

 

再生医療のご相談はRiyoメディカルクリニックへ

Riyoメディカルクリニックは、厚生労働省に第2種再生医療(幹細胞治療)および第3種再生医療(高活性化NK細胞療法/計画番号:PC5240046)の提供計画が受理された医療機関です。番号は公開していますので、厚生労働省の公開サイトでもご確認いただけます。

この記事で書いた確認点でいえば、細胞加工の担い手が焦点になるでしょう。当クリニックは院内にCPC(細胞培養加工施設)を備えており、施設番号はFC5240026です。細胞の採取から培養、品質検査、投与までを院内で一貫して管理しており、培養は専門臨床培養士が担当しています。外部へ委託していませんので、工程のどこで何が行われたかを院内で追えます。

体調の変化があったときの扱いについても、カウンセリングの段階でお尋ねください。院長の上利 理代(あがり まさよ)は放射線治療専門医としてがん治療の臨床に長年携わった医師で、期待できることと難しいことの両方をお伝えします。

立地はJR東西線の北新地駅の東出口からすぐ、JR大阪駅から徒歩約5分の大阪駅前第2ビル2階です。診療は火曜・水曜・金曜・土曜の10時から17時まで、第1・第3・第5月曜は10時から16時までとなります。完全予約制ですので、電話またはWeb予約でお申し込みください。

WEB予約はこちらから

 

参考文献

1. 厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について」(令和8年3月13日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71555.html

2. 厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について」(令和8年4月21日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72690.html

3. 厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく改善命令について」(令和8年2月20日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70640.html

4. 厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく改善命令について」(令和8年1月23日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69163.html

5. 厚生労働省「e-再生医療(再生医療等の各種申請等のオンライン手続サイト)」
https://saiseiiryo.mhlw.go.jp/

6. 厚生労働省「再生医療等提供計画の提出等について(概要)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/saisei_iryou/plan.html

 

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